いまの世の中、新卒であっても中途であっても、社員採用コストが非常に多くかかっています。
その採用コストをムダにしないためにも、その後の育成に力を入れる企業が多くなっています。
また、人手不足という会社も多くあり、若手社員であっても「はやく戦力化したい」という声もたくさん聞こえてきます。
入社後、できるだけはやく順調に若手社員を伸ばしていくために、企業側としてどのようなことを予め理解し、そして注意をすればよいか、整理をしていきます。
■まずは、若手社員の「戦力化における壁」を知ることが大切です
人材育成こそが企業戦略の重要な柱であるという認識は浸透していても、実際にその実現に向けた具体的な取り組みができている企業は決して多くない状況です。
人の育成は、一朝一夕で結果が出るわけではなく、投じた時間や費用に対して、ハッキリと目に見える結果が出るものでもないからです。
育成がうまくいかない時、「育てる側」ではなく「育てられる側」にその責任が向けられ、ともすれば「ダメな社員」というレッテルを安易に貼ってしまいがちです。
特に若手社員の場合、「生きてきた世代や環境」が、育てる側と異なっているケースも多く、そのギャップを埋める努力を不十分なまま若手の育成に突入することで、その成長を阻む壁を次々とつくり上げてしまう負の連鎖を招き、「壁」となっている場面を多く見てきました。
「育てる側」にも課題はないかを確認することが、若手のはやい戦力化に向けたカギとなるでしょう。
「育成される側の課題」、そして「育成する側の課題」を明確にし、それぞれを的確に解決しながら育成を進めていくことが、若手のはやい戦力化につながります。
■若手の戦力化を成功させるポイントとは?
① 企業理念の理解は何度もおこなう
かつての高度経済成長期のような、企業の成長と発展が自身の幸福と直結する時代はすでに終わりを告げ、一人ひとりの幸福は仕事以外の分野でも多様な形で論じられるようになっています。
しかしながら、一日のうちのもっとも多くの時間を投じるものが仕事であることに変わりはありません。
だからこそ、仕事をするうえで所属する組織(企業)にどのような理念があるのか、自身の努力と幸せがその理念とどうリンクするのか…が、一人ひとりの仕事へのモチベーションを醸成する上で非常に重要なキーワードとなります。
若手社員に対して、やることだけを伝え、背景にある仕事の意義や、どう会社の理念や目的につながるのか先輩社員が怠っていないでしょうか。
また、その業務の背景は何度も伝えてようやく理解できるものも多くあります。
理念と仕事の意味合いは、事あるごとに若手社員に伝えていきましょう。
② OJT計画に基づく育成・研修をおこなう
若手社員の育成を進める上で最もやってはいけないのが、教える側の経験・体験のみに依存した「感覚的なトレーニング」です。
これらは、教える側の思考を一方的に押し付けるだけになってしまい、本来の正しいスキルや考え方の習得から大きく偏重した内容になってしまいます。
若手社員の傾向や特性を十分に考慮し、目指すべき方向性と着地点を明確にした上で、その成長速度に合わせたロードマップを用意して、優先順位に沿った育成(研修)を行なっていくことが重要です。
きちんと、一人ひとりのOJT計画を作った上で育成ができていますか?
行き当たりばったりの若手育成を行なっているようでしたら、見直しが必要だと考えます。
③ 内省の機会を多く持つ
仕事は、もちろん最初はうまくいかないことも多いものです。
大切なことは「失敗しないことではなく、失敗から多くのことを学び、その反省を生かしてステップアップしていくこと」です。
そのためには、失敗を周囲(他人・環境)のせいにするのではなく、まず自分自身に原因を求めるような思考パターンを教えることが必要です。
また、新たな仕事に取り組んだ時や、取り組んだ仕事を終えた時など、それぞれの機会で要点をまとめさせたり、不明な点をそのままにせず質問させるなどして、自身の中で「曖昧さ」が残らないように丁寧に消化させることが大切です。
若手の育成を担当する社員は、基本的なコーチングやティーチングのスキルを持ち合わせていますか?
話の聴き方、質問の仕方、指示の仕方、ときには叱り方…など、このような若手社員に内省を促す指導スキルがないまま、育成をしては若手の成長も鈍くなります。
もし、その力が不足していると感じれば、先輩社員に研修などの機会を設けましょう。
④ インプットに加え、アウトプットの場を必ず設ける
若手社員は、毎日の業務に必死のあまり、「インプット」することばかりに目を向けがちです。
そのことはとても大切なことですが、いくら知識が増えても使えなければ意味がありません。学んだことを「実際に使って成果を出す」ことがもっとも重要です。
そのためには、学んだことを社内プレゼンやスピーチなどのアウトプットの機会をより多く用意し、インプットしたことを具現化する育成(研修)の場が必要となります。
そのような育成の機会を、指導担当は積極的に設ける努力をしなくてはなりません。
また、若手社員にはアウトプットしたものに対するフィードバックも大切です。
このフィードバックも、若手指導においては「非常に重要なスキル」ですが、先輩社員から見て達していない点、マイナス点ばかりを若手社員に伝える人が多く、適切なフィードバックが行えていない人も多いと感じています。
出来ているところと、出来ていない所を明らかにし、それぞれに対してフィードバックを行うという、基本に立ち戻って指導ができるスキルを先輩社員は身に付けていきましょう。
⑤ メンターを置く
若手社員は、仕事だけでなく、日々の生活を通して様々な壁にぶつかります。
それを乗り越えるか、悩み・苦しみを一人で抱え込んでしまうか、その分かれ目は、相談に乗って適切なアドバイスを与えてくれる存在(メンター)がいるかどうかによります。
ときにひたすら傾聴に徹し、ときに具体的なアドバイスを与え、ある時には叱咤激励してくれるメンターの存在を置くことは、若手社員にとって成長を支えるものとなるでしょう。
また社内で適切な存在がいないときには、キャリアコンサルタントにその役目を担ってもらうことも可能です。
企業としても、若手社員を孤立させない努力をしましょう。
今回は、若手社員を伸ばすために必要な観点を、過去の経験からポイントにまとめています。
特に若手を伸ばすためには、サポートする先輩社員側の教育も非常に重要な点です。
昨今では、「人材育成に関する助成金」が厚生労働省から、多く出ています。うまく国からの補助も活用しながら、若手社員の育成だけではなく、先輩社員の基本育成スキル向上(コーチング、ティーチング、フィードバック、叱り方など…)にも注力いただければと思います。
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