ジョブ・クラフティングとは、仕事への向き合い方を見直すことで、仕事の中に主体的にやりがいを見出していこうという考え方です。クラフト(craft)は、英語で「工芸」の意味。紙を切り貼りして、さまざまな大きさ・形の作品に仕上げるペーパークラフトのように、退屈な作業や、やらされ感のある業務にひと工夫を加えて、面白いものに変えていこうという概念なのです。
「最近仕事がつまらないな」「仕事のモチベーションが低下している」「キャリアプランをイメージできない」という個人にはもちろん、最近では、従業員に主体性を持たせるため、人材育成のひとつとして取り組む企業も増えています。
今回は、ジョブ・クラフティングの具体的な実践方法について、ご紹介いたします。
目次
ジョブ・クラフティングとは
ジョブ・クラフティングとは、米イェール大学経営大学院のエイミー・レズネスキー教授とミシガン大学のジェーン・E・ダットン名誉教授によって、2001年に提唱された概念です。「自らの仕事を積極的にデザインする」ことによって、生産性向上や仕事のやりがい、動機づけを高めようとする手法です。
「会社や上司の指示でやらされている」と思うと、仕事が単なる作業となり、仕事の面白さを見出せなくなってしまいます。その状態では、モチベーションが下がり、成果につながらず、会社の業績や自身の評価にも悪影響が表れる、という悪循環に陥る可能性があります。
「仕事のやり方」、「人とのかかわり方」、「働く意味」を再設計することで、やらされている感を取り払い、「自らやっている」という意識に変えることがポイントです。
<ジョブ・クラフティングの事例>
例としてよく挙げられるのが、東京ディズニーリゾートで働く掃除係です。
東京ディズニーリゾートの掃除係は、「カストーディアルキャスト」という名前で呼ばれています。自分の役割を単なる掃除係ではなく、「来場者をもてなすキャストの一員」と捉えることによって、来場者に楽しんでもらうため、バケツの水で地面にキャラクターの絵を描いたり、写真撮影や道案内をしたりなど、自ら工夫を凝らして積極的に来場者と交流し、生き生きと働いています。
では次章から、具体的なアプローチ方法について、詳しくみていきましょう。
ジョブ・クラフティングの3つのアプローチ
ジョブ・クラフティングでは、以下3つのアプローチから意識の変革を行っていきます。
タスク(task crafting) | 仕事の作業そのものの改変。必要と感じれば新たな作業を自分の仕事に加えるなど。 |
関係性(relational crafting) | 作業や作業上必要となる人間関係の内容や幅の調整。仕事を通じて積極的に人と関わるなど。 |
意味(cognitive crafting) | 作業や作業に内在する意味や意義の再構築。自分の担当する仕事の目的がより社会的に意義のあるものであると捉えなおすなど。 |
ジョブ・クラフティングの進め方
【ステップ1】 現状のタスク(ToDo)の洗い出し
はじめに自らの仕事を把握します。ご自身が抱えている業務(タスク)をすべて書き出してみることから始めましょう。
【ステップ2】 情熱・強み・価値を書き出す
次に自らの「情熱・強み・価値」を明らかにします。ジョブ・クラフティングの基準になります。
■情熱: 仕事に限らず、強い興味・関心があること
■強み: スキル、才能など、現在の仕事に関連していると思われる能力
■価値: 職業人生の中で最も重要なこと、仕事を通じて最終的に得たいこと
【ステップ3】 タスク・クラフティング
ステップ1で書き出したタスクと「情熱・強み・価値」のつながりから、タスクのやり方や量を再検討していきます。
【ステップ4】 関係性クラフティング
「情熱・強み・価値」を活かすために、各タスクにおいて「誰」と「どのような関係」を作るかを考え、関係者との交流を再検討しましょう。関係の例として、『親しくなる、出会う、連絡し合う、教わる、教える、協力する、縁を切る』など。
【ステップ5】 意味クラフティング
タスクの集合がどのような意味・意義を持つか、心地よい拡大解釈をして、言葉で表現しましょう。例として、『世界の人々をつなぐ仕事(空港シャトルバス運転手)』など。
【ステップ6】 実行計画の検討
ジョブ・クラフティングを実現するための実行計画を検討しましょう。
『理想の仕事を実現するために…』
■どのような行動を取りますか?(明日から始められる行動、長期的に行う行動)
■助けてくれそうな人は誰で、いつ、どのような援助を求めますか?
■克服すべき課題や障害は何で、どのように対応しますか?
出典:ユースキャリア研究所代表 高橋浩氏(キャリコンサロン2月度勉強会資料より)
【活動報告】キャリコンサロン勉強会2月度~自分の仕事をデザインするジョブ・クラフティング技法習得講座~
期待できる効果と留意点
期待できる効果
・自己効力感が高まり、自信がつく
・ 仕事の目的や成果に対するコミットメントが高まる
・ 日常の業務に自分なりの工夫を取り入れるようになる
・ 自分の仕事に対してやりがいと誇りが持てる
ジョブ・クラフティングを企業が推進することによって、従業員をより能動的な姿勢に変える効果が期待できます。自分なりの工夫を盛り込んで仕事をすることによって、会社が自分と一体化し、組織への愛着心を高めることも可能です。
留意点
・ 自由裁量が少ない仕事・職場では実施の難易度があがる
・ やりたいことだけして職責を話さないのはNG
・ 過度なタスク縮小・削除は情熱を失うこともあるため要注意
最後に
仕事にやりがいを見出す、ジョブ・クラフティングという手法をご紹介しました。
気が乗らない仕事は誰にでもあるものですが、仕事の捉え方を変えたり、自分なりの工夫することによって、誰でも仕事を充実させることが可能です。ジョブ・クラフティングを進める際の補助ツールもありますので、お気軽にお声掛けください。
集合研修や個別カウンセリングにて、ジョブ・クラフティングを取り入れたい企業様は、是非HRラボへご相談ください。
※HRラボ/キャリコンサロンでは、労務相談、キャリアコンサルティングや、その他育成・研修についてもご相談も承ります。お気軽にお問合せください。お問合せはコチラ
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